72°

書いたものなど

旅行

巻く、巻く、ゆっくりと、うすくけぶる山並みが黙って通りすぎていく。 壁むこうに臥せる彼らが見えなくなって、隣席の友人はなにも言わないが、潔白なくらい、その人に話すこともなく。 よく冷えた瓶、朝雨、そういうものたちが、うしろに飛び去るようにし…

「海で死んだ若ものは」

おおきな日輪の奥底にやわらかに眠る水兵がいて、想像のなかで、インド洋まで航跡をつけている、そう、わたしは信じてはいないけれど、たしかに教科書にはそうある。 きっとにえらい、あの先生が言った。 本当なのだろうか、ぶ厚い空の底のあれをサルベージ…