奈良吟/平成30年度
あれは誰かすがった痕 折れ指のささいな乱暴を覚えている
ほんとうは水掻きなどない(だって人だ)(ふくよかな甲がさいごの影だ)
これは祈りなどではない、だからどうか嘘をつくならもっと上手に
帳降りて目も開けられなくなってから目を合わせたらそれきりでさよなら
花を蒔き雲を散らせばきみの目に残るものかと思うむかしの
対峙のときまず明らかにきみを見た 信心とは能く言ったものであった
古めく本のこと思っていた きみの住むうすくらやみで息を吸いながら
けれどもしぐさが祈りになるならば祈ることを探しに遠くまで