72°

書いたものなど

2018-01-01から1年間の記事一覧

旅行

巻く、巻く、ゆっくりと、うすくけぶる山並みが黙って通りすぎていく。 壁むこうに臥せる彼らが見えなくなって、隣席の友人はなにも言わないが、潔白なくらい、その人に話すこともなく。 よく冷えた瓶、朝雨、そういうものたちが、うしろに飛び去るようにし…

よるべより

飛切をむらなく蒔いて 天上がこんなに惚けた日があってもいい 車は船、夜の牽きゆくばかりさえ先を譲るが越えることはなし 果物坂眩ませるような暗がりで独りいずれかの文と転げて 天幕を幾枚剥いでの夜の果てを息づくような藍にみている 摺りたてのありあけ…

能登吟/平成30年度

空までも長閑に塗るきみのために かの手による涅槃西ならいつまでも おおでまりをついて歌ってゆくところ 大わにのしずかにて呑む春の月 春惜しの海ひるがえして昼の底 かぎろひに似ても黙まりそこにある 春闌に鳴らしましますのどの国

珂のころに

零下にも街はなりにて歩行でゆく夜をかえりみててっぺんまで冬 翌夜の大鎮守を眺めるのもさりとて惜しく故郷を思うが 陽ありて眠り雪のいるはしばしに、コンチネントのみやげを思えば いちめんの白は迷信、青を刷いて海原にもする北の作法です おぼつかなく…

信仰

みなさんの千年を引き受けましょうか、夜をまだ越えられなくても ねがわくば、そう、遠退いて パライソの如くいだいて 間違えないよう あるいは易しく信じたり ぼくらこの眠りばかりはさまさないように 在るものの欺瞞はひどくとりとめもない しかして手ばか…

東京都/2017年度

愛の街!夜をかわして下北沢、それかあるいはキャットウォーク かつては飯田橋ともいう、水底を覆う立体交差の遺跡 朝霧に煙れる都市は東京という名のしずかな王冠をいただく ここ上野、ま東をにらみ煙を吐く、統治者たちは定刻を待つ そしてまだ病んだクエ…